事務員に憧れて

私は、高校生のころから将来は事務員になりたい、という夢がありました。

そのためパソコンや電卓、電話応対などの事務的な授業が受けられる学科を選択し、3年間勉強をしていました。

高卒で就職活動を始めた時、残念ながら中々事務員の求人はなく、とりあえず1年間は正社員でどこかで働こうと思い、服のクリーニングの工場で正社員として働いていました。

クリーニング工場で1年間働き、やっぱりずっとやりたかった事務員の仕事がやりたいと思い、退職し事務員になるための就職活動を始めました。

ネットで求人情報を調べてみると、調剤薬局の事務があり、医療事務も勉強したいと思っていた私は薬局事務の求人に応募し、面接に受かり薬局事務のパートとして働き始めました。

働き始めると、高校の時に思い描いていた事務の仕事とは違い、当たり前ですが患者さんとのコミュニケーションやもちろん、先輩とのコミュニケーションをとることがとても大事と気づき、ただパソコンや電話応対ができるだけじゃだめなんだな、と実感しました。

憧れている職業の現実と思い描いていることは違うんだなあ、と社会人2年目で知ることができました。

緊張した仕事

新入社員としてある総合スーパーに入社したころの話しです。売場の体験として一度は、食品、住居関連、衣料関連と一通りまわることになりました。私が最初に行かされたのは鮮魚売場で、「さんま」を売らされました。しかも格好はスーツ姿で、腕には実習生の腕章をつけての店頭販売です。誰が見ても新入社員がやらされている感があったと思います。でも私は開き直って大きな声で手をたたいて売りました。もちろんお客様には、やけくそでやってるようにしか見えなかったと思います。見ていたおじさんは、「新人、頑張ってるな!威勢だけはいいぞ!」と言って買ってくれました。見ていたおばさんは、「私にも同じぐらいの息子がいるのよ!」と言って買ってくれました。なんだかそのうちに自然にお客様と会話ができるようになって、ノルマのさんま300匹を完売することができました。ここまでは良かったのです。

予想以上にさんまが早く完売したので、鮮魚の課長が、今度は店内マイクで夕方の刺身の特売案内をしてくれと言われました。君のあのさんまの売り方だったらきっとできるからと、特売案内の原稿を渡されました。原稿の内容は「本日も○○店にご来店いただきまして、ありがとうございます。店内お買いまわり中のお客様にご案内いたします。」から始まる原稿です。店内マイクは作業場にある電話から、全店一斉、1階食品のみ、2階衣料関連のみ、3階住居関連のみと番号で分けて案内できるようになっていました。

私はなにしろカラオケのマイクは握ったことはあるものの、電話の受話器で話す声が店内に流れるという経験は初めてでした。課長は「俺が売場に行って、君の店内マイクの状況を聞いているから」といって売場に行きました。そのときには私はすでに舞い上がっていて、課長が「1階食品売場の店内マイクは〇番を先に押してからだからな」と言っているのも上の空でした。 売場からは課長が早くしろとジェスチャーで言ってます。もう私はやけになって、いよいよ電話のプッシュボタンを押しました。原稿を見ながら、「本日も○○店にご来店いただきまして、ありがとうございます。」ここまでは良かったのです。

その次は、「店内お買いまわり中のお客様にご案内いたします。」のはずでした。ところが、私は緊張あまり口の中がカラカラになり、ろれつがまわらなくなって言葉を噛んでしまいました。その噛んで言った言葉が、「店内オカマ中のお客様にご案内いたします。」です! 私がはっ!と気づいたときは、課長はすでに売場で倒れていました。30秒もしないうちに店長も飛んできました。本来は1階食品売場だけに入れる店内マイクが、私が間違ってボタンをプッシュしたみたいで、全店一斉に入ってしまったのです。しかも「店内オカマ中」のお客様への案内として!鮮魚の課長は、店長からめちゃくちゃ怒られていました。私にも店長が近づいてきて、「この店はほんとうにオカマの人のお客様が多いから、以後は気をつけなさい!」と半分笑いながら言われました。